調布市仙川町の皮膚科
仙川皮フ科クリニック

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小児のアトピー性皮膚炎について

アトピー性皮膚炎の治療方針

アトピー性皮膚炎は「アレルギーの病気」とだけ考えられがちですが、実は、皮膚の油分や皮膚細胞をきちんと結びつける物質が足りないために皮膚が乾燥し、抵抗力が低下していろいろな刺激に負けやすい(バリア機能の低下)ということが基本です。

アレルギーはほとんどない子供さまから、非常に強い子供さままでいます。年齢によっても違います。現在得られているデータでは、正常に成長している子供なら1歳8カ月くらいの時点で、アレルゲンとなる食物タンパクを十分消化できる腸管になり、遅くとも3歳ごろには問題がなくなるということです。

また食物検査が陽性だからといって、アトピー性皮膚炎の原因はその食物であり、除去さえすれば大丈夫と考えるのは非常に短絡的だと思います。1週間食べさせないで皮膚がきれいになり、次の1週間食べさせてみて皮膚が悪くなった場合にだけ、その食品を3歳ぐらいまで控えさせるとよいと考えています。

油分の足りない皮膚にとっては、汗もかゆみを起こす刺激物であり、暑い季節には、肘や膝などの関節の内側や首のしわの所などに湿疹ができやすくなります。乾燥肌やかきこわしをそのままにしていると、ハウスダストやダニなどに対するアレルギーが起こってきます。湿疹ができてしまったら、治療のためのお薬の力を借りていい状態に戻しましょう。

ステロイドの塗り薬を怖がる保護者の方がいらっしゃいますが、症状のひどさに応じて必要な量を必要な期間使い、症状が軽くなったら薬を減らしたり、弱いものに変えたりすれば心配ありません。そのために当院では、「これをこのように○○日間塗ってください。そしてその翌日受診してください。」などと具体的にお話ししていきます。そして、皮膚の状態が良くなったあとは、保湿剤でスキンケアをきちんと続けましょう。これがもっとも大事なことです。

特別なことをしなくても子供のアトピーの大部分は、成長とともに改善します。正しいスキンケアをきちんと毎日してあげ、情報の洪水に惑わされず、わが子の自然治癒力を見守ってあげてください。スキンケアを中心とした外用療法だけではなかなかよくならない子供さまには、漢方療法その他を併用して治療させていただきます。また、皆さまが思っているよりも頻度は少ないのですが、食べ物のアレルギーがアトピーをより悪化させている場合もあります。経過を見ながら、そう判断される場合はしかるべき対応をお話しします。心配しないで、何でも相談してください。

■基本治療

◆軽症
保湿剤によるスキンケア療法が中心です。
◆中等度
弱いステロイド軟膏を短期間使用し、その後保湿剤によるスキンケア療法にもっていきます。
かゆみが強い時にはかゆみ止めを内服します。
希望によりアレルギー検査を行います。
◆重症
ステロイド軟膏を強い~中~弱いものへと徐々に軟膏の強さを変えながら使用します。その後は、小児用プロトピック軟膏と 弱いステロイド軟膏を併用しながらステロイド軟膏を終了していきます。時間はかかりますが、最終的には保湿剤によるスキンケア療法が中心の普通の治療になることを目指します。
抗アレルギー剤を内服しながら、体質改善に漢方薬も処方します。
アレルギー検査を勧めます。

■症状の重い小児アトピー性皮膚炎の外用療法について

ステロイド軟膏とプロトピック軟膏の使い方

1:ステロイド軟膏による治療からプロトピック軟膏の導入期
ステロイド軟膏の強さを変えながら、他の軟膏との重層療法も併用しながら、症状のひどい部分をある程度治療します。
プロトピック軟膏を1日1回夜に、ステロイド軟膏を1日1回朝に外用します。プロトピック軟膏の刺激感が強い子は、夜にステロイド軟膏、朝にプロトピック軟膏を外用してもかまいません。
2:プロトピック軟膏への移行期
ステロイド軟膏の急な中断によるアトピー症状の再燃を避けるため、週末(土・日曜)のみこれまでの導入期と同じように、朝はステロイド軟膏、夜はプロトピック軟膏を外用します。
平日(月~金曜)は1日2回プロトピック軟膏の単独外用を続けます。
3:プロトピック軟膏と保湿剤による維持期
週末のステロイド軟膏外用を終了して、プロトピック軟膏を1日1回夜に、保湿剤を1日1~2回外用します。
その後は保湿剤を主体として、週末(土・日曜)のみプロトピック軟膏を夜1回外用する方法にします。
欧米学会誌では、皮膚症状が改善しても再燃しやすい部位を中心に週2回プロトピック軟膏の外用を続けると、4カ月以上皮膚の良好な状態が続き、年間の悪化回数を有意に抑えることができたと報告しています。
4:保湿剤による安定期
維持期まで治療が進むとアトピー性皮膚炎はかなり改善します。その後はアトピー性の乾燥肌に対して保湿剤のみのスキンケアを1日1~2回続けて症状を安定させます。
プロトピック軟膏は保湿剤で乾燥肌がコントロールできなくなった時に、夜1回、3~7日間ほど外用します。そして、保湿剤の使用を続けながら、ステロイド軟膏は年2~3回塗るくらいの症状でコントロールされる状態を治療の目標としています。

■発症部位と症状・体質別漢方エキス処方例

部位 漢方エキス剤
顔面頭部 ◆湿潤
治頭瘡一方、黄連解毒湯
体幹四肢 ◆湿潤・紅斑
黄耆建中湯、桂枝加黄耆湯、消風散、黄連解毒湯
◆乾燥・苔癬化
四物湯、補中益気湯、柴胡清肝湯、六味丸、当帰飲子
その他 ◆虚弱体質
小建中湯、黄耆建中湯、補中益気湯
◆ストレス体質
抑肝散、抑肝散加陳皮半夏、甘麦大棗湯

小児と漢方薬

■幼児・小児の漢方薬の飲ませ方

最近の幼児・小児は西洋薬ではドライシロップなどのオレンジやパインなどのフルーツの味に慣れているため、独特の味のする漢方エキス製剤に対しては、やはり飲むのには抵抗があるようです。しかし、味にはそれなりの理由もあり、工夫次第では飲めるようになります。

  • 味覚を鈍麻させるために、ココア、リンゴジュース、カルピスなどに溶かしたり、ヨーグルトと一緒に服用したりするのも1つの方法です。しかし、蜂蜜に混ぜて服用する場合には1歳未満の乳幼児は避けてください。1歳未満の乳幼児に蜂蜜を食べさせるのは、乳児ボツリヌス症発症の危険性があるので、控えることになっています。
  • 薬剤を少量のお湯に溶かし冷却後、冷凍庫内でシャーベット状にして与えてもよいと思います。さらに、ストローを使うと舌に直接触れる量がすくなくなります。
  • 経腸栄養剤・流動食に付随しているフレーバーを利用するのも1つの方法です。現在ではいろいろな味覚のフレーバーがあるので、小児が好むものを利用してください。
  • 母親が同じ漢方エキス剤を同時に飲んだり、乳幼児が飲めたら、両親がおおげさにほめてあげてください。

■お母さまから聞いた具体例

  • パンに塗るチョコレートクリームをプリンに付いてくる小さなスプーンに一杯とり、エキス剤とよく混ぜて、そのまま同じスプーンで子どもの口に入れてあげる。
  • さらに混ぜた後、冷蔵庫に入れてトリュフチョコのように固めるという上級テクニックもあります。
  • 市販のミニシュークリームの上半分を開け、中のクリームと少量のエキス剤を混ぜます。そして元通り蓋を戻して、何事もなかったかのように子どもの口の中に入れてあげる。
  • マヨネーズが好きなマヨラーのお子さまにはマヨネーズに、納豆好きならひき割り納豆に混ぜると飲んでくれたという場合もあるといいます。

◆食物アレルギーについて

■食物アレルギーの経皮感作とアトピー性皮膚炎
近年、子供の食物アレルギーが増加しており、鶏卵、牛乳、小麦などに対してアレルギー反応を起こしていると耳にいたします。そして、乳児期アトピー性皮膚炎患児に食物アレルギーが合併し、皮膚炎が早期に発症したり、重症だったりするほど食物アレルギーの発症も増加するようです。

この理由は、経皮感作という新しいメカニズムによるものです。アトピー性皮膚炎や湿疹などで皮膚バリア機能が損なわれている乳幼児の皮膚に、卵や牛乳といった食べ物が持続的に接触することで、皮膚を通じて食物アレルギーに感作されます。その後、感作された食物を食べることで食物アレルギーが発症します。

このため、顔面(特に口囲)・頸部の難治性湿疹は早い段階から抗アレルギー薬や漢方薬の内服治療とステロイド軟膏やプロトピック軟膏にようる外用治療が必要です。その後は治療と日常のスキンケアを行い、乳幼児期を通じて湿疹のない肌の状態を保つことができれば、食物アレルギーになることを予防できると思います。

食物アレルギー感作のメカニズム
(1)食物による経消化管感作
(2)花粉などの環境抗原による経気道感作後の交差反応
(3)経皮的感作

■アレルギー検査
迅速検査は指先からの微量採血で6種類(卵・牛乳・小麦・ダニ・動物・スギ)のアレルゲンを検査し、20分程の待ち時間で結果をお話しすることができます。症状に応じて詳しい血液検査(39種類まで)も行います。軽症のお子さまでも希望によって検査します。